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超高温熱風ヒータ開発ストーリ

ブログ2015/06/21

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2015/06/21

私の高温熱風ヒーターとの関わりは昭和50年(1975年)頃から始まった
そのころ高温熱風ヒーターの原型はアメリカ製品だった 

 シルバニア製 真空冶金(株)扱い

この時期はちょうどウシオ電機(株)をやめフェニックス電機(株)を創業した時期にあたる。 私はフェニックス電機でハロゲンランプの生産設備を準備するかたわら高温熱風ヒーターを開発した
このアメリカ製熱風ヒーターは内径φ8の石英管の中に発熱体があり、その発熱体は花巻となっており、それがネジ切りセラミック管にねじこまれた構造の物だった。発熱体材質は一般的にカンタル線と呼ばれているものである。最高使用温度は1400 ℃とされているが、 実用的には1150℃程度までの長時間使用に耐える

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この発熱体を石英管の中に入れ、 エアーを流すと約 800℃の熱風が得られる。 ウシオ電機時代、 私は上司からこのヒーターをまねて作るように言われたが、 全く同じものを作るのは気が進まなかった (技術屋のプライドが許さない?興味がわかない?)
またネジ切りセラミック管が非常に高価(¥3000程度)だった事も問題だった。 そこで私は花巻コイルに代えて二重コイル発熱体を使う事を考えた。 この試作をやっている内に過去の電気炉での経験を思い出した。カンタル線は高温になると表面に絶縁皮膜ができ、電気が通らなくなる

この性質は一般的には困った性質だった。電熱線と導入電線の接続部等が高温になると絶縁膜ができるために接触不良を起こし、過熱断線に至る事がある
私の思いつきは、 この困った性質を利用して予め電熱線を十分酸化させておけばコイルを密着させてもピッチ間の絶縁を保つのではないか?だった。 そしてこの考えは正解だった。十分に酸化させれば表面に絶縁膜ができるので、ピッチ間を密着させてもショートせずに発熱体として機能する。ただしその絶縁耐圧は高温時には数ボルト程度だが、コイルの巻き数が多ければピッチ間に加わる電圧は(1/巻き数)になるので、定格電圧200vのヒーターでもピッチ間電圧を数ボルト以内にするのは難しくない。
カンタル線とは材質的には鉄70%-クロム25%-アルミ5%程度の合金線である。 ニクロムの代用としてドイツで開発された電熱線で、希少な戦略物資であるニッケルを使わなくて済む電熱線だった 

  セラミック管もドイツ製を使ってます ドイツ人はスゴイ 尊敬!  

大昔の発明品なので、もちろん特許は切れており、日本のメーカーでも同等品を製造している。例えば(株) リケン の商品名パイロマックス。 これは絶縁膜の強度や高温性能でカンタル社製品よりも優れていると私は評価している。日立金属のエスイットも高温性能は最高ではないが材質的な安定性が優れており、絶縁膜の安定性も良い
この電熱線は高温になると合金化していたアルミが染みだしてきて電熱線表面に丈夫なアルミナ(酸化アルミニウム)の皮膜を作る。しかもこの絶縁皮膜は電熱線内部に含まれるアルミから供給されて成長していく。この絶縁膜は例え剥がれても次々と再生するので絶縁膜が剥がれる心配はあまりしなくて良い
このアルミナ膜の元々の役割はもちろん電気絶縁ではない。この緻密なアルミナ膜により空気(酸素)が内部に浸入するのを防ぐので、 鉄が主成分の電熱線が空気中での高温使用に耐えるのだ。 しかしアルミナ膜は電気絶縁物としても最高性能だった
私の熱風ヒーター初回製品はこの密着2重コイル発熱体を採用した品物で、少数だが実際に販売し、使用された。問題は起きなかった。発熱体サイズは同容量のシルバニア製の1/3程度だった。しかもネジ切りセラミック管を使わないので材料費は非常に低く抑えられた。これでシルバニア製の商品力,機能,性能を完全に超えたと確信した
しかし二重コイルでは二次巻き数が20回~30回だったので、二次ピッチ間には100v仕様のヒータでも5v近い電圧が加わる。そのためかなり丈夫な酸化皮膜を作らないといけない。200v仕様だと更に困難になる
その点、花巻コイルならば巻き数が多く、ピッチ間の電圧は0.5v~2vに抑える事ができる。そのため二重コイル発熱体はあきらめ、花巻コイルの密着コイルとした。密着コイルならば革新的なので花巻でも真似をしたと非難される心配は無いと思った
この発熱体を使用した熱風ヒーターは型名をSAHとし、その後40年に渡り使用され続けている。超ロングセラーだ。 それどころかSAHヒーターの販売は現在でもなお拡大し続けている。用途は非接触ハンダ付けを初め、ガスバーナーの代替やプラスチック加工などさまざまだった
この電熱線に形成される絶縁膜を利用する密着コイル型発熱体は、ぜひとも特許を取りたかったが数十年前に松下電器(現パナソニック)から電熱線の表面に絶縁皮膜を付けたヒーターが出願されており、惜しくも特許にならなかった。過去の特許は単に「電熱線の表面に絶縁膜を形成する」というだけであり電熱線に合金化したアルミが染みだしてアルミナ膜を形成するという原理によるものでは無かったが電熱線に絶縁膜を付けるという点が同様なために拒絶された
これは痛手ではあったが、その後私が独立して別会社でこの製品を作ろうとしたときに障害にならなかったという点でラッキーだったとも言える。 しかし特許がなかったがために(株)ハイベック がそれまでフェニックス電機から購入していたSAHヒーターを自社生産しはじめた。 全く油断もすきも無いのだ。 ちなみにSAHのH型というのはハイベック向け仕様ということで命名したものだ。 この仕様はSUS管の中に石英ガラスやセラミックからなるヒーター部分をコンパクトに組みこんだもので、 その後のSAHヒーターの主力構造となった
私が1992年に(有)フィンテックを作り、この熱風ヒーターの改良型を主力製品とした。 作り方を改良し、工程を簡略化し、中心のセラミック棒を太くして内部に熱電対を通せる様に改良した。 この熱電対内蔵型熱風ヒーターは最近まで主力商品として売上の1/3近くを担ってきた。 フェニックス電機とは一時期険悪となったが、 その後これを含む少量多品種ヒーターのOEM生産を任せてもらうことになり、 現在も良好な関係を保っている  
しかし2008年頃に問題が発生した。インフリッヂ工業(株)が熱風ヒーター製造の合弁会社をもちかけ姫路で生産を始めたが、INF社は社長(当時:今村宏明)の義理の息子 (渡辺秀人) を送り込み、製造方法を習得させると早々に会社を閉鎖してしまい自分たちで作り始めた→ (株)サンメジャー 山梨県南都留郡鳴沢村4023-6 
しかしこの様に卑劣で破廉恥で卑怯でまともな人間なら決してやらない事を平気でする「日本人の恥!」みたいな輩を許すわけには行かないので、この市場を席巻し直し、醜悪なコピー品メーカーを追い出す事ができる画期的な熱風ヒーターが作れないか模索していたが、ちょっとした思いつきで密着花巻コイルを更に圧縮できないかというアイデアが出た。これがやってみると意外と簡単に実現できた
これまで 「密着コイルは縮める事の出来る限界であり、それ以上縮める事はできない」 という思い込みが有った
確かに一般的な円形巻きコイルは、電熱線の断面形状を保ったままでは密着以上には縮まらない。 無理にでも縮めるにはワイヤーの断面形状を変形させるしか無く、極端に大きな力が必要になる。しかも円形コイルの場合は無理に圧縮したとしても通過空気と接する有効表面積も減るので熱風ヒーター用発熱体の小型化という目的では全く意味が無い。ただの金属のパイプができるだけだ
しかし花巻コイルの場合にはピッチ間の接触点の位置がずれていくためにワイヤーが曲がることにより比較的簡単に圧縮が可能になる
しかも通過エアーとの接触面積(熱交換面積)もほとんど減少しない。むしろ通過エアーがより強く乱流化するために実際の熱交換効率は向上する。これは同じ発熱体温度でもより高温の熱風が出せる事を意味する。また熱ロスは発熱体長さにほぼ比例するために熱ロスも大幅に減少し、熱効率の高い熱風ヒーターとなった

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上側が密着花巻コイル。これでも他方式に較べると3倍以上の高密度だっ た。 しかし今あらためて見てみると、かなり無駄な隙間が多いのに気付く。

                         
下側は上側と同じ物を圧縮して作った圧縮花巻コイル。更に2倍以上の高密度となっている。 究極的な高密度  

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左は上の写真の圧縮花巻コイルを伸ばしてみたもの。この様に電熱線は複雑な三次元形状をしている。実際にはこれを押し縮めた密着状態で使用するので、広い表面積が小さな空間に高度に凝縮される
これ以上の高密度発熱体は恐らく作れないだろう。究極だと思う
各種のヒーターの単位体積あたりの電力を概算してみると、一般的な熱風ヒーターは15w/cm^3、光エネルギーに変換するハロゲンランプが90w/cm^3 程度なのに対し、この圧縮花巻コイル採用の熱風ヒーターは100w/cm^3 に達する。つまり高密度熱源の代表の様なハロゲンランプと同レベルの体積電力密度を持っている事になる。 これは結構すごいことだと思う
この改良により発熱体のサイズは更に半分以下にまでなった。シルバニア製に較べると1/6以下だ。しかも1000℃の高温下で約1MPaの圧力で圧縮して作るのだから、 それ以上縮む事は無い
これは極めて強い耐風圧性があることを意味する。事実、900℃で圧損が0.5MPaにもなるような大風量(φ8管で150L/min)で使用しても発熱体には異常が無かった。 ただし発熱体を支える部分が従来構造ではこの圧力には耐えず、そのため新しい支持構造を考案し採用した

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写真上が従来の密着花巻コイル発熱体。下が圧縮コイル方式の発熱体。ヒーターのパワー(電力)は同じだ。高温性能や熱効率は下側の方が優れている。型名のSAHDはSAH+HD(高密度)の意味でつけた


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このサイズで500w-900℃の熱風吹き出しが可能。左側からエアーを入れ、  右側から熱風が出る。 熱風温度センサー(K熱電対)内蔵型 

圧縮によりエアーが通りにくくなるかと思ったが、測定してみると大差無い。しかも同じ熱風温度ならば発熱体温度が低く出来る。このためこの改良型ヒーターは熱風温度900℃をうたう事ができた。銀ロー付けが可能な熱風温度だ
技術内容   http://www.fintech.co.jp/sah/SAHD-news2012.flame.htm製品          http://www.fintech.co.jp/nf-SAH/sahs-nf.htmホーム        http://www.fintech.co.jpヒータ以外への応用  http://www.fintech.co.jp/sah/HD-coil-frame.htm
このヒーターは工業用熱風ヒーターという特殊業界向けだし単純な構造原理なので一般社会的には目立たないが、画期的なイノベーションと言えると思っている(自画自賛?)   

そしてこれは特許で防衛出来るので、少なくとも今後20年間以上は市場を独占出来るだろう。そして高温熱風ヒーターの市場を徐々にだが確実に席巻していくだろう。なぜなら圧倒的な機能差,性能差があるのだから。圧縮に多少のコストはかかるが、金属ケースや絶縁材の使用量が減らせるので、トータルコストも安い
ユーザーにとってもこのヒーターを組みこめば、機械設備のサイズを小さくする事ができ、大きなコストダウンが可能になるかもしれない。また従来ヒーターではスペース的に使用できなかったところにも使える様になる。また振動衝撃の加わる場所でも使え、従来製品では想像できなかった様な超大流量での使用にも耐える
INF社の今村前社長の非道な行為が結果的にこの画期的なヒーターが生まれるきっかけになったのだから、世の中何が幸いするか分からない。おかげでフィンテック社の超高温熱風ヒーターにおける独占体制が約束され長期に渡る安定的な経営が約束された様なものだから。

私は工業分野での熱風加熱の将来性を楽観視している。これほど手軽に材質を選ばず高い均熱性で高温加熱できる手段は他に無いので必ずある程度大きなシェアを確保し続けるだろう。ただし熱風の廃熱回収は考えていかなくてはならないだろう。これが次のテーマだと思う
この発熱体は垂直使用も問題なくできるので、熱風ヒーターに限らず一般的な赤外線ヒーターとしての用途もある。カートリッジヒーター用発熱体として使っても従来品とは圧倒的な性能の差が出るだろう。恐らく1100℃での長時間使用が可能になる
密着コイル方式の難点は巻き数を100ターン以下にはしたくない (ピッチ間電圧が高くなる) ので細長い形状になりがちだったことだ。しかし用途によっては短い事を要求される場合が多々あった。この要望に応えるために従来はヒーターユニット6本構成のヒーターで対応してきた。
しかし圧縮コイル方式ならば、この様な複雑な構造によらなくても十分に短くできる。今後当社のヒーターは短くするという意味では6本構成を採用せずに圧縮コイル方式を採用していくだろう。しかし6kw~30kwといった大出力品については今後も6本構成を採用するだろう  

 大電力のヒーターは作るのが大変 !  そのてん6本構成はらくだー
※この部分は訂正 2018/12その後の改良で1本のヒータで9kwクラスまで対応できるようになった。熱風温度は1100℃を超えている。更に現在は1本で13kwのヒータも開発中である。そのため、6本組のヒータは約20kwクラス以上100kw超のものが対象になる。→改良品
またこの圧縮花巻コイルはヒーター以外にもその耐圧縮性やコンパクト性などを利用した応用が考えられる。例えば免震構造材や圧縮限界の短いコイルバネなど。実際に応用できるかどうかは別として従来に無かった機能を持っている事は間違いない。大化けする可能性を秘めている技術だろう   

http://www.fintech.co.jp/sah/HD-coil-frame.htmhttp://www.fintech.co.jp

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超小型熱風ヒーター   φ4-100w
圧縮コイル方式なら、更に約半分の発熱体長さになる

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